■歩く狂人


歩いている


殺してやる 殺してやるっ
殴ってやる 殴ってやるっ
撃ってやる 撃ってやるっ


……声にならない


俺の声は、誰にも聞こえない。

結局は自分しか居ない。

歩道で誰かとすれ違う度に俺は色々考えてる。



あいつは……恋愛か?それもバッドエンド。 6点ってとこか

サラリーマン……拳銃を握らせたら面白いかもしれないな。 8点……

あの厚化粧女は……残酷な死に方がいいな。 4点、と

ガキ……気に入らないな。交通事故で悲劇の始まり…… うん、9点

どう見てもガリ勉……ナイフはどうだろう? 2分もあれば教室は血の海…… 7点だな

何だあの変な髪形……ああ言う奴こそ活躍させてみたいな。 もちろん結末は「死」で。 8点でいいな

そこの警官……政治的陰謀、ヤクザの抗争に巻き込まれて、拳銃の暴発…… ダメだ、ありきたり過ぎる、1点。





俺は死の製作者(Producer)、いや監督(Director)、むしろ脚本家(Writer)。

すれ違う人間を瞬間的に観察しては殺してる。
死に様を演出してる。
結末だけを考えてる。





ふふ……今日もたくさん殺した。
家に着くまでに何人殺したかな?
明日は何人殺そうか?
今日殺した連中の事をちゃんとノートに書き留めて……



「マサシー、ご飯よー。」


End